2000年前の「地上メディア」――ナスカに眠っていた248点の新絵
山形大学とIBMがAIを駆使して発見した248点のナスカ新地上絵。その意図とは何だったのか。
砂漠の「見えない絵」をAIが拾い上げた
ペルー南部の乾燥した台地に刻まれたナスカの地上絵は、20世紀に空から発見されて以来、考古学者たちを魅了し続けてきた。これまでに確認された絵は893点。だが最新の調査で、その数が大きく更新されようとしている。
山形大学の研究チームはIT大手IBMと手を組み、航空写真をAIで解析するという手法を導入した。AIは1000点以上の「候補」を検出し、その後に研究者が現地で一点ずつ照合した結果、2023年から2024年にかけて248点の地上絵が新たに確認された。人物像が41点、リャマが21点、さらに信仰の対象とされてきたコンドルの姿も含まれていたという。人間の目だけでは見落としてきたものを、機械との協働がすくい上げた形だ。
「メッセージを送る」ために描かれたのか
新発見の絵が持つ最も興味深い点は、その「機能」についての新たな仮説だ。研究チームによれば、それぞれの絵にはテーマがあり、不特定多数に向けてメッセージを発信する「メディア」のような役割を担っていた可能性が高いという。
ナスカの地上絵はこれまで、宗教的儀式や暦、あるいは天文との関連など、さまざまな解釈が提唱されてきた。しかし今回の仮説は、絵が「伝達手段」だったという視点を前面に出している点で新鮮だ。誰が、誰に向けて、何を伝えようとしたのか。2000年という時間の壁を越えて、その問いへの答えはまだ出ていない。
大阪万博で初めて「公開」された発見
2025年7月28日、大阪・関西万博のペルーパビリオンで共同会見が開かれ、新発見の地上絵の写真が「ナスカ文化展」として初めて一般に公開された。学術的な発見が、万博という国際的な舞台で世界へ向けて発信されたことは象徴的でもある。
砂漠の地面に刻まれた線が2000年の時を経てAIに見つけ出され、今度は万博の展示室という「別の舞台」で不特定多数に語りかける。古代のナスカ人が地上絵に込めたかもしれない「広く伝える」という意図は、形を変えながら今も続いているのかもしれない。彼らは本当に、何を伝えようとしていたのだろうか。