文明が答えを出せない5つの問い——人類の「知の限界」はどこにあるか
ギザの地下構造物、古代ローマの謎の金属器、地球の水の起源——調べるほど深まる謎を、現時点の知見と共に整理する。
「分かっている」と思っていたことが、実は分かっていなかった
科学が急速に進歩するこの時代、私たちはついつい「人類はたいていのことを解明した」と思いがちだ。しかし現実には、毎日口にする水の起源すら、研究者たちの間で答えが出ていない。身近すぎるものほど、問いを立てることすら忘れてしまう。そこに、未解明の謎が静かに積み重なっていく。
今回は、考古学・地質学・環境科学にまたがる「まだ解けていない問い」をいくつか取り上げ、現時点で分かっていることと、分かっていないことを整理してみたい。
地面の下に眠る「問い」——ギザの地下構造物とローマの十二面体
エジプトのギザ台地では近年、地中レーダーを用いた探査技術の進歩により、地下に存在するとされるL字型の構造物が注目を集めている。東北大学とエジプト当局による共同研究が関わっているとも伝えられるが、その構造物が何のために造られたのか、誰が造ったのかは、現時点では明らかになっていない。ピラミッド建設との関係を示唆する見方もあれば、全く別の用途を想定する研究者もいる。
一方、ヨーロッパ各地で100点以上が出土しているとされる「古代ローマの十二面体」も、長年にわたって謎のままだ。青銅製で、各面に円形の穴が開いた正十二面体の物体で、英国アンティクワリーズ協会の学術誌にも記録が残っている。測量器具、ろうそく立て、占いの道具——さまざまな仮説が提唱されてきたが、2000年以上が経った今も、その用途について学術的な合意は得られていない。製造の精巧さと、用途を示す文献記録がまったく残っていないという事実の組み合わせが、謎をいっそう深めている。
「水はどこから来たのか」——最も身近な未解決問題
地球の表面の7割を覆い、生命の根源でもある水。しかしその起源については、現在も科学者たちの間で議論が続いている。大きく分けると「宇宙由来説」と「地球内部由来説」の二つがある。前者は、かつて地球に大量の彗星や小惑星が衝突し、そこに含まれていた水が蓄積されたという考え方だ。後者は、マントルなど地球内部に存在する水が、火山活動などを通じて地表に供給されたという説である。どちらか一方だけが正しいのか、あるいは両方が複合的に関わっているのか——現時点では「まだ分からない」というのが正直な答えとされる。
毎日飲み、毎日使う水が、どこから来たものなのか。その問いに人類はまだ完全には答えられていない。
謎は「遠い昔」だけにあるわけではない
古代の遺物や地球の成り立ちだけが謎の舞台ではない。現代社会が生み出したプラスチックごみの一部が、海洋や環境中でどこへ消えているのか——「ミッシングプラスチック」と呼ばれるこの問題も、NOAAやUNEPが継続的に調査しているにもかかわらず、行方の全容は把握されていないとされる。
人類は謎を解くために道具を磨いてきた。しかし道具が精緻になるほど、新たな問いも生まれる。「分からないこと」の輪郭がはっきりしてくること自体が、科学の進歩の証とも言えるかもしれない。あなたが今手にしているコップの水は、いったいどこから旅してきたのだろうか。